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ロボット手術センター(消化器外科)

『中河内医療圏初導入の手術支援ロボット Da Vinch Xiを用いた大腸がん手術』

大腸がんとは

 現在の日本では『2人に1人ががんになり、3人に1人がんで亡くなる』と言われています。その罹患者数(がんになる数)、死亡者数が増加しているのが大腸がんです。
2019年のデータでは、男女合わせると日本の罹患者数の第1位でした。 また、死亡者数は男性では2位、女性では1位であり、大腸がんは頻度が高い疾患と言えます。

大腸がんの治療方針

 大腸がんの治療には、内視鏡治療、手術治療、化学療法、放射線療法があり、治療方針はがんの進行度(ステージ)によって決められます。
内視鏡治療のみで完治するステージ0の大腸がんや、手術による完治が困難で化学療法や放射線療法の適応となるステージⅣの大腸がん以外は、多くが手術治療の適応となります。そのため、手術治療でがんを確実に取り除くことが重要です。

紹介写真

今までの大腸がん手術

 大腸がんの手術はもともと開腹手術が基本でした。実際に臓器に触れて、直感的な操作ができるなどの長所がある反面、傷が大きく、痛いため術後の回復が遅れるなどの短所がありました。
30年ほど前から日本でも腹腔鏡手術が導入され、傷が小さく、体に優しい手術が普及しましたが、腹腔鏡手術はモニターを見ながら細長い器具を使って操作するため手術が難しいという短所がありました。
ロボット支援手術は開腹手術と腹腔鏡手術の短所を解決できる方法として導入されました。

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ロボット支援手術とは

 ロボット支援手術とは、執刀医がロボットをコントロールしながら行う手術であり、当センターでは Da Vinch Xi という器械を使用しています(図1)。 執刀医は立体的な3Dモニターで術野を10倍まで拡大して見ることができるため、微細な解剖も鮮明に認識でき、細部の手技が正確に行えます。執刀医自身が患者さんの体内に入って手術をしているかのように視界が良好です(図2)。
ペーシェントカート(図3)には4本のアームがあり、それに付けられた内視鏡カメラと3本の鉗子を体内に挿入します。執刀医の細かな手の動きをコンピューターへ忠実に伝え、アームが体内で連動して手術を行います。Da Vinch Xi の鉗子は手首以上の可動域と柔軟でブレのない確かさを持ち、指先にも勝る細かな動きを可能にします(図4)。

これらの優れた機能により、実際の手術でも

  • 手術中の出血が少ない
  • 術後の合併症のリスクが低い
  • 術後の回復が早い

などの様々なメリットが期待できるため、2018年にロボット支援直腸がん手術が保険収載されました。

(図1)Da Vinch Xi
図1

(図2)Da Vinch Xi の3Dモニター
図2

(図3)ペーシェントカート
図3

(図4)Da Vinch Xi の操作性
図4

ロボット支援手術の微細で正確な操作

「インテュイティブサージカル合同会社資料より」

最先端のロボット支援手術を大腸がん手術に応用

 2018年に直腸がんはじめ消化器外科領域の術式でロボット支援手術が保険収載となって以降、現在に至るまで消化器外科領域でのロボット支援手術の症例数は急速に増加しています(図5)。
2022年にはロボット支援結腸がん手術も保険収載され、すべての大腸がんでロボット支援手術が実施可能となりました。

(図5)国内のロボット支援手術の症例数の推移

図5

当センターでのロボット支援大腸がん手術

 当センターでは2019年1月にDa Vinch Xiを導入し、2019年3月にロボット支援直腸がん手術を開始しました。導入当初は安全第一で基本手技を確立させ、その後徐々に高難度手術へと適応を拡大しました。
2022年からはロボット支援結腸がん手術が保険収載されたため、ロボット支援結腸がん手術も開始しました。ロボット支援手術症例数は年々増加し、2024年の時点で300例を超えるロボット支援大腸がん手術を施行しています(図6)。 現在は部位を問わずすべての大腸がんにロボット支援手術を適応しています。また、当センターにはロボット支援大腸がん手術のプロクター(指導医)が3名従事しており、近隣地域の患者さんへ質の高いロボット支援手術を提供することが可能です。

(図6)当センターのロボット支援大腸がん手術の症例数

図6

大腸がん手術のどのような場面でロボットが有効か?

 直腸がんは肛門の近くに存在するため、肛門を温存できるかどうかが大きな問題となります。 (図7)のように腹腔鏡のまっすぐな鉗子では肛門周囲への到達が難しく、骨盤最深部での操作には適していません。 ロボット支援手術では、自在に操作できるカメラとブレのない安定した視野のもと、ロボット支援手術の多関節性、可動性を生かすことで、肛門周囲の剥離操作も比較的容易となります。結果としてがんから十分な距離を確保してがんを切除することが可能となり、がんの根治性を向上させ、肛門機能の温存にも寄与することができます。
 また、ロボット支援手術の骨盤深部での安定した操作性は、側方郭清や他臓器合併切除でも有用です。このような高難易度手術こそよりよいロボット支援手術の適応と考えています。

(図7)骨盤最深部のイラスト

図7

消化器外科 ロボット支援手術  担当医師

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向かって中央:中田部長、左:谷田副部長、右:杢谷医長

関連部門

  • 腹部ヘルニアセンター
  • 消化器外科